女装・ジェンダーレス アパレルブランド「REBIS」

昨今、ジェンダーレスというコンセプトのもと、性に縛られず、多様性を表現できるアパレル商品などを展開する企業が増えています。人によってはそのような商品を見たことがない、あるいは知っていても企業がどんな想いで取り組んでいるのかわからない方もたくさんいらっしゃると思います。今回は女装・ジェンダーレス アパレルブランド「REBIS」を取材しました。LGBT、セクシャルマイノリティといったSOGI問題とマーケットを考えるヒントや、ものづくりへの想いをみなさんにお伝えできればと思います。

10月から「REBIS」を本格的にスタートさせた代表の古崎夢湊 <ゆらねこ>さん。ご自身はXジェンダーと認識されているそうですが、基本的に恋愛対象は女性。趣味として女装を楽しんでいらっしゃいます。コロナ直後、外出規制をされ、未知のウイルスに国内が混迷を極める最中、誰しもが楽しみや自己表現を抑圧されるような状況になりました。ゆらねこさんはそのタイミングに、女装向けのランジェリーを作りたいと考えたそうです。

女装をする中で、女性用のランジェリーではサイズが合わなくてキツい、息苦しいと感じていたので、女装に快適な製品の必要性を強く実感したとのこと。元々webデザインを中心に活動していたゆらねこさんは、アパレルには疎かったため「東京ファッションテクノロジーラボ」で3Dモデリングやファッションについて学びました。その中で、ウイグルの綿製品問題や水質汚染など、人権やSDGsについても興味の幅が広がり、将来的にそういった問題について解決できるような事業展開を目標とされています。在学中、女装向けのランジェリーについて校内でプレゼンをしたところ、大きな反響があったそうです。

現在は、女装・ジェンダーレス アパレルを展開しながら、今後はランジェリー事業を本格的に展開したいと同氏。製品は工場生産とOEMを利用しているそうですが、メンズとレディースがはっきりわかれているので、サイズ面での不都合や、洋服の型から作る必要がある場合には、コスト面での厳しさもあるそうです。日本では男女の体格差が比較的小さいので、メンズがレディースの服を着る(もしくはその逆)ということもたまに見受けられます。ゆらねこさんが目指すのは、そのようなカルチャーの延長で「女装=変わった人ではなく、女装=おしゃれの一環」と変わっていくこと。そこにはご自身が以前感じていた「女装したいけど恋愛とか結婚とかできるのかな?」「女性に好かれるために男性性を出すのか」といった葛藤が根幹にあるそうです。女装を続けていく中で、趣味に理解のある女性が現れたりと、自分を信じた結果、周りが変わっていくことに気づいたとのこと。

同氏は、現在の日本のマーケットでは、女装向けアパレルは「女装村」でしか販売ができない、つまり特定の限られた人向けのニッチなビジネスになっていると指摘しています。社会問題という観点でもゆらねこさんの考える「変わっていることがカッコイイ」という視点は解決のヒントになるのかもしれません。SOGI JAPANでは「日本らしさ」や「日本の良さ」にフォーカスしたダイバーシティの推進を目指しています。日本で独自に発展してきた「原宿文化」「和食文化」「アニメ文化」や歴史そのものが今や、当然のように海外にも受け入れられています。今回の取材を通じて、趣味や自己表現といった場面での多様性が認められるには、今後、ある種のムーブメントとして、日本らしく独創的で洗練された、マイノリティ発のカルチャーが浸透していくような動きが重要になってくるのかもしれないと感じました。

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